療育の基本的な考え方

 

1.療育の対象となるお子さんは?

 発達に障害を伴っていることがはっきりしているお子さんの他に、お医者さんの診断などを受けていないが、保護者の皆さんや保育・教育に携わっている方が何か発達が気になっているお子さん、また勉強が不得手で持続できないとか、人との関係を作るのが苦手で困っているなどのお子さんも対象としています。

2.療育の方法やねらいは?

 武蔵野東教育センターでは、武蔵野東学園が長年積み上げてきた自閉症児のための「生活療法」における考え方を基本において、お子さんの状態を考慮しながらさまざまなノウハウのもと、独自教材によりスモールステップで療育を進めています。 

 武蔵野東学園では、創立以来50年以上にわたり「Daily Life Therapy®(生活療法)」を通して子どもたちの指導をしてきました。生活療法とは、学園創立の母である北原キヨ博士が独自に開発した自閉症児のための教育法です。毎日の生活を通して子ども一人ひとりの個性を深く理解し、内在する力をできるかぎり引き出して、社会の一員として豊かな生活を送ることができるようになることをめざしています。
 本学園は
1964年の幼稚園開園に始まり、小学校中学校高等専修学校、さらに1987年にアメリカマサチューセッツ州にボストン東スクール(BHS)を開校しました。その教育は国際的な評価を受け、これまでイギリス自閉症協会、ウルグアイ、韓国などから要請を受けて指導員を派遣しています。また諸外国からの研修員も受け入れています。
 ちなみにBHSは、
1997年(平成9年)にNCASES(全米特殊教育認定委員会)から、全米で7校目の優良校の認定を受けています。

 武蔵野東教育センターの療育プログラムは、自閉症スペクトラム障害及びその周辺の子どもたちが対象となります(自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害の方、又はその疑いのある方)。その他、診断の有無に関わらずお子さんの発達が気になっている方々を対象としています。
 スタッフとの関わりや子どもたち同士の関わり合いを通して、それぞれの子どもに表れている荒削りの原石のような個性を、毎日の生活の中に活かしていける社会性をともなった確かな輝きに育てていくことをめざしています。これらのプログラムを通じて、子どもたちには自信と意欲が湧いてきます。このように心の成長を育みながら、一人ひとりが自立に向けて自ら成長していけるよう、個に即した援助を行います。

3.家庭教育に活用できますか?

 子どもの教育において家庭教育が大切であることは、発達障害をともなう子どもであっても変わることはありません。発達に障害のある子どもさんの場合、専門の医療機関とか療育機関でのケアが保護者の方の精神的な支柱になりますので、家庭で過ごす時間はそれを補助する働きだけのような気持ちになりがちですが、決してそんなことはありません。
 子どもたちは生まれたときから家族と寝食を共にし、この家族関係の中で基本的な生活習慣を身につけたり何らかの生活パターンやルールを獲得したりしていきます。戸外での活動や教育のあるなしにかかわらず、子どもにとっての生活の基盤はあくまでも家庭にあって、その成長における家庭生活の果たす役割はこの上なく重要であると言えます。
 当教育センターにおける療育の役割は、各プログラムによる活動を通して子どもの発達を促すとともに、家庭の中で成長が図られるように保護者の方にそのノウハウを提供し、長期的な幅の広い支援をすることによって子どもを家庭や地域社会に返していく仕事であると考えています。それは保護者の方が家庭の本来の機能を果たすことができるようになるための橋渡しの仕事と言えます。
 当教育センターで療育をお受けになっている保護者の方には、センターとよく連携をとりながら積極的に学ぶという姿勢を持っていただきたいと思います。


4.教育センターの将来的展望は?

 当教育センターは平成18年度より本格運営が始まりましたが、当初未就学児および小学低学年であった療育の対象は現在高校生年齢までに伸びています。
 療育プログラムの種類も、その後グループダイナミクスを活用したプログラムや学習など認知能力を高めるプログラム、さらには特定テーマを設定したプログラムの開発により多彩なものとなっています。今後、さらに彼らの趣味の広がりに結びつき、生活の質(
Quality of  Life)の向上をはかることにつながる各種プログラムを開発していきたいと思います。これらの活動を通し、各自の趣味を深めるなどして生活の幅を広げることは、豊かな精神生活の向上をはかっていくための基盤になります。
 発達障害をともなう子どもの中には、しばしば独特な感覚をもっていたり、ひとつのものに固執・集中したりする傾向が見られる子どもがいますが、この特性を「欠点」ではなく「違い」や「ユニークさ」としてとらえ、伸ばしていくことによって、特異な才能を発揮する人たちが出てくるケースもしばしば見られます。そうした彼らの能力が周囲の関心を呼ぶことにより、一般の方との交流の場や理解を深めてもらう機会が増えていくことも、彼らにとって大事なことです。
 また、成人の人たちにおいてはとくに生活空間が狭くなりがちですので、将来的には気安く交流できる定期の場を作ったりイベントを催したりしながら、孤立しがちな彼らの心を癒し、社会参加を促していきたいと思います。
 今後とも、プログラム開発においては保護者の皆さまの期待や要望、さらには独自のアイデア提案なども参考にしながら作り上げていきたいと思いますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
 


◇発達障害とセンターの活動

 近年、認知面、言語面、運動面、社会性などの機能の発達に問題があって、社会適応において支援を必要とする子ども(「発達障害児」と呼びます。)の存在が社会的に大きくクローズアップされています。本来、発達障害は、知的障害、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害(AD/HD)、学習障害(LD)などのことを言いますが、わが国では、平成17年度から施行された発達障害者支援法に基づき、それまで施策の対象外であった知的障害を除くこれらの障害を「発達障害」と定義して、支援の対象にしています。
 発達障害の概念は、先天性の障害であること、その症状が低年齢の発達期に現れること、生涯にわたって続く障害であることです。その原因は遺伝子異常、体内環境の異常、周産期の異常、生まれた後の病気や環境などさまざまで、先天的な脳の機能障害に起因すると言われていますが、多くの場合特定することができません。 

 以下、発達障害児における教育センターの療育方針を簡単に記します。
 自閉症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害は、対人関係や社会性の発達に障害があること、コミュニケーション能力に障害があること、興味関心に偏りがあり固執や反復などの行動がみられることの条件を満たす場合を指します。また、情報を統合し推測することが困難な想像力の障害や感覚の過敏と鈍麻も重要な特徴になっており、自閉症スペクトラム障害とも呼びます。

 その中で、言葉の発達に遅れがないものをアスペルガー症候群といいます。アスペルガー症候群は、認知や言語発達など知的な遅れはあまりみられず、むしろ特定の分野の知的能力が高い例が見られます。しかし、同年代の子どもと仲間関係が作れない、TPOに合わせて行動するのが難しい、暗黙のルールが分からないなど社会性に問題が見られます。また、相手の表情が読み取れないとか、人に関心をもって近寄るが距離のとり方や話しかけ方が不自然だったりする傾向が見られます。
 教育センターでは、これらの子どもたちに対して、少人数グループを形成し、一つのことに集中して取り組める生真面目さや特定の分野での能力の高さなどの強みを生かしながら、対人関係の能力の向上を促していく支援をしています。

 注意欠陥多動性障害(AD/HDは、年齢不相応な注意力の不足(不注意)、多動性、衝動性の3つの症状を特徴とする障害です。物事に集中できない、忘れ物が多い、気が散りやすい、最後までやり遂げられない、落ち着きがなくひと時もじっとしていられない、授業中に離席してしまう、しゃべりだすと止まらない、思いついた行動を唐突に行う、せっかちですぐにいらいらしてしまう、興奮しやすいなどの特徴があります。また、話を最後まで聞けない、待つことが苦手、失敗して反省したつもりでも同じことを繰り返してしまうなどの傾向が見られます。
 これらの子どもたちに対しては、少人数グループの中でわかりやすいルールを設定し、気持ちや体力を発散させながら達成感を積み重ねることによって行動に落ち着きを与え、持てる力を適切に表現することができるように指導しています。また同時にソーシャルスキルや社会規範を守るスキルを育てる支援をしています。


 学習障害(LDは、全般的な知的発達に遅れはありませんが、聞く、話す、読む、書く、計算する、または推論するなどのうち、特定の能力の習得と使用に著しい困難を示すものを指します。例えば、聞き間違いや聞きもらしをする、思いつくままに話す、語句や行を抜かしたり繰り返し読んだりする、計算ができない、テストの問題の意味がわからないなどということがあります。 時として、周囲から単になまけているだけとか逆に全般的に知的障害があると誤解されることがあります。
 これらの子どもたちに対しては、得意な学び方や優れた能力を活用して自己肯定感を高めつつ、個別指導や少人数グループの中で不得手な分野の学力向上を図っています。
  

 武蔵野東学園は、約50年間の歴史の中で、自閉症児に限らず、上記のような発達に何らかのハンディを持つ多くの子どもたちと向き合い、教育活動を行ってきました。当教育センターはそのノウハウの蓄積を活用し、これらの障害を持つ子どもたちの教育・支援を行うとともに、保護者の皆様の家庭教育の方法についての支援にも力を入れています。 

 

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