「混合教育」について


 今日当学園には幼、少、中、高、合計1700名ほどの児童生徒が在籍していますが、そのうちの460名ほどが自閉症を中心とした発達障害児です。このように障害児と健常児を同じ学園で教育する教育を、当学園では「混合教育」と呼んでいますが、これは「インクルーシブ教育」そのものです。

 学園の「インクルーシブ教育」の歴史は学園創立時、つまり五十年前にさかのぼります。当学園が幼稚園を開園したとき、どの幼稚園からもわが子の受け入れを拒否された五名の保護者が、当幼稚園の門を叩きました。そのとき創立者の一人であり初代園長の北原キヨは、その幼児たち(実はみな自閉症児でした)の入園を許可しました。これが学園の「混合教育」の始まりでした。

 当時自閉症児はもっとも教育が困難な障害児と考えられていて、北原キヨ自身も初めて自閉症児と対し、これをどう教育するか大いに戸惑いました。試行錯誤の中から北原キヨが思いついたことは、他人とのコミュニケーション障害を持つ彼らの社会自立実現のためには、幼児のうちから積極的に健常児と関わりを持たせ、時間をかけてコミュニケーション能力を養うのがよいのではないかということでした。

 そして北原キヨは音楽や体操では両者を同じ教室で学ばせました。これは、自閉症児には教育訓練よりも刺激の強すぎる社会から隔離し、温かく見守るのがよいと考えていた、当時の自閉症研究者の常識と正反対の試みでした。しかしこの「混合教育」の成果が次第に多くの自閉症児の保護者に知られるところとなり、全国から入園希望者が殺到するようになりました。

 学園はその後小学校、中学校、高等専修学校を次々に開校しましたが、どの学校でも障害児と健常児の交流を促進する仕組みを充実させてきました。運動会や学芸会では両者混合のプログラムを種々取り入れるなど、日常的学園活動以外でも両者が深く関わりあう機会を作り出しているのです。
 ちなみに中学校の吹奏楽部には十数名の部員の半数にあたる自閉症児がメンバーとして参加していますが、彼らは健常児との役割分担を巧みにこなし、見事なアンサンブルを奏でて聞き手を驚かせます。

 自閉症児と深いかかわりを持ちながら学園生活を送る健常児たちは、年齢相応に自然に自閉症児たちをリードしまた手助けをします。そして自閉症児たちは健常児の温かい支えと彼らから受ける適度な刺激により、社会自立の道を着実に歩みます。また自閉症児の多くに見られる几帳面で何事に対しても粘り強く集中して取り組むという特徴が、健常児の生活態度、学習態度に大きな影響を与えています。

 こうした環境で学園生活を送る健常児たちは、学外においても障害を持つ人々に対し、偏見を持つこともなくごく自然に接し、またボランティア活動に強い関心を示すなど、「生きた福祉の心」が自然に育まれます。学園を巣立った後、教育、医療、福祉の道に進む生徒が多いのも特徴です。つまり当学園の生徒たちは「ノーマライゼーション」の推進者の一人として成長してゆくのです。ちなみに現在学園卒業生27名が当学園に奉職していますが、その多くは二十代です。児童や生徒として混合教育の魅力を体感した彼らが、これからの学園混合教育の深化の担い手となってゆきます。

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