校長の独り言【32】 



 著書『ダメ人間はいない 学校で生徒はかわる』2002年より
 第三章 新米校長のとらえている日本の教育の現状
 ○進む教育改革の4つの視点から
 今、国が推進している教育改革には4つの視点がある。この視点の設定理由こそが日本の教育の現 状であると言えよう。私はこの視点の設定理由を次のようにとらえ、合わせて本校の各視点毎の取 り組みの現状も同時に簡単に整理してみた。
 1.「心の教育の充実」
   (設定理由)学級崩壊、不登校、いじめ、少年犯罪の増加への対応
   《本校の取り組み》
    本校の教育目標は、職業教育と人間教育である。
    人間教育、心の教育を推進するにはこの混合教育の環境は最高のステージであり、不登校生    徒の新たな出発の学校となりつつある。
    教師と生徒、生徒同士の心のつながり合いにより、学級崩壊やいじめは存在しな         い。
 2.「個性を伸ばし多様な選択のできる学校制度の充実」
   (設定理由)高校中退、フリーターに対応した、やり直しのきく学校制度づくり
   《本校の取り組み》
    本校では既に中退者の受け入れ制度を作り実施している。
    卒業後の進路としてフリーターは認めていない。
    やり直しの場だけでなく、居心地がよく成長できる居場所づくりを目指している。
 3.「現場の自主性を尊重した学校づくり」
   (設定理由)教職員の自律と資質向上、さらに学校教育の質の向上
   《本校の取り組み》
    本校では既に教員全員での学校経営のシステムが構築されている。
    資質向上の為の学内研修組織、及び公開授業を既に実施している。
 4.「大学改革と研究振興の推進」
   (設定理由)学力低下からの脱皮と科学技術創造立国を目指して
   《本校の取り組み》
    本校は高等教育機関ではないが、職業教育の観点から基礎作りに力点を置いている。

 これらの4つの視点の対象は私立というより、公立を対象にしたもののように感じられ、公立の私立化の推進ともとれる。だが、私立にとって無関係ではないし、不登校や中退に関しては公立に比べ多くはないが私立にも事実ある。しかし、「現場の自主性を尊重した学校づくり」に関しては、明らかに公立のみの視点である。何故ならば、私立は少なくとも創立時からの「建学の精神」、「創立者の教育理念」を継承発展させているからである。 この現状からの脱皮は、教育制度の再構築(公立の学校評議員制度、人事考課)や学習指導要領の改訂だけでは解決できるものではないと思う。校長をはじめ学校現場にいる教職員の資質向上のみが問題解決の一番の近道であると私は考えている。いずれにしても、このような日本の教育の現状は、私立、公立問わず、学校存続のサバイバル状態になって来た証でもある。
 何よりも、この教育改革は対処療法でしかないと考えている。完全学校週5日制にはじまり、国立大学の民営化、中高一貫の推進、最近は小中一貫の話もある。さらに学区制廃止などの改革の具体案が発表されつつあるが、私はシステムを変えて変わるものではないと考えている。変えるならもっとそれに費やす時間を短縮しないかぎり、時間的なタイムラグにより改革を決定した時と改革案を実施するときのギャップが生じ、改革の主旨から外れて行くような気がしてならない。教育改革が必要な理由が生じたのも、本当に数年の出来事であったことを忘れてはいけないと思う。
 このような時代だからこそ、即実行あるのみではないだろうか。

校長  情報ID 14760 番  掲載日時 09/19/2006 Tue, 10:02