校長の独り言【63】 



混合教育と不登校 その2
本校の不登校教育の実際
一.教育目標
混合教育の環境下で、中学校まで不登校であった生徒一人ひとりに、学校での「居場所」を提供し、自分の「存在感」や「自信」を確信させ、さらに将来の目標を定め、その目標達成のために「努力する価値観」を育てます。

二.教育方針
現在、不登校生徒への対応として「遠隔教育」や「ホームスタディー制度」等が盛んに進められていますが、本校では「毎日、学校に登校する」を基本方針としています。
本校の生徒である以上、また多感な時期だからこそ、毎日学校という集団の中で様々な個性を持つ友人との心の通い合い、心のぶつかり合いを通し、生徒一人ひとりが人間としてより一層の成長を図れるよう学校全体で支援します。

三.教育の実際
本校では、入学をきっかけに自閉児の存在を知り、関わりをスタートさせる健常児が大半であり、その健常児も中学時代に素行面、学力面などに問題を抱えていたり、不登校・ひきこもりなど情緒的な不安定さを抱えている場合が多くあります。
 そのため、自閉児のみならず、健常児への対応も十分に留意しながら、混合教育の推進を図っています。
 その対応策の一つとして本校が導入し、積極的に取り組んでいるのが、バディシステムです。
 先に述べたようにバディとは、健常児と自閉児による一対一のペアであり、このバディを一つの単位として学校生活の様々な活動に取り組ませていくのがバディシステムとなります。このバディシステムこそが、生徒たちに混合教育を理解してもらう大きな役割を担っていると考えています。

○一年生研修
新入生に対して校外の研修施設を使い二泊三日で行われる研修ですが、この中で自閉症に対しての初めての理解教育を行うことになります。自閉症に関する知識をほとんど持っていない外部からの生徒に対して、本校のバディを中心に以前放映されたNHKスペシャルのビデオを見せることや、卒業生を招いて在校時に体験した自閉児との交流の話、さらに教師からの話を通じて、自閉症についての大まかな情報をつかませます。また、実際に初めて過ごす共同生活の中で自閉児の特異な行動を目の当たりにして驚いてしまう生徒に対しては、その場面を教師が好機ととらえ、適時話をしていきます。健常児の中には、この時期から自閉児とのバディの基礎作りが始まる生徒もおり、教師側は、集団生活の中で、一人ひとりの健常児が自閉児に対する接し方を把握し、自閉児との相性を探り、今後のバディ作りの参考にしていきます。
○様々な学校行事
一年生にとって六月に行われるスポーツ大会は、自閉児を知る上で大変貴重な体験となっています。三人四脚やムカデ競争、学年対抗応援合戦など全員が協力しなければならない種目が多く、どうやって自閉児と向き合えばいいのか、バディとは何か考える場ともなります。この健常児が自閉児への対応について悩む時期が教育的に見れば好機ともいえ、教師は具体的な対応法や自閉症の特徴などの情報を明確に示しながら指導を進めていきます。こうした指導を加えていくと、合唱コンクールなどの行事を通じて、ひたむきに練習し本番に臨む自閉児の様子から努力することの価値といったものを学ぶことも多いようです。
○宿泊学習(臨海教室…導入期後は、スキー教室、ハワイ学習等)
宿泊学習ではバディ会議により決められたバディで同部屋になり数日間生活を共にします。臨海学習やスキー教室では、日頃校内では見ることのない、荷物整理や入浴、就寝時の様子も見られ、友だちについて再発見する場ともなっています。また、健常児はこの経験を通じて自閉児の保護者の苦労がよく分かると話しています。それだけに、健常児にとって負担を感じやすい活動といえます。そのため、教師は頻繁に声をかけながら、ひとりで負担を背負わせないように配慮していきます。そうした宿泊学習の集大成ともいえる三年次に行われるハワイ学習では、まるで兄弟姉妹のようにバディのことを理解し思いやって行動する場面が多く見られ、バディの確立・熟成が感じられます。
○交流給食と縦割り清掃
水曜日の給食は、生徒からの要望でどのクラスでも食べてよいことになっています。バディ同士が互いのクラスに集まって給食を食べた後は、昼休みを共に過ごす様子が見られます。また、毎日昼休みに行われる縦割り清掃では、日頃のバディと離れ、清掃の為の新しいバディを組み、他学年の先輩や後輩との関係を新しく身につける時間ともなっています。




校長  情報ID 16214 番  掲載日時 11/29/2006 Wed, 09:24