校長の独り言【69】 



 著書『ダメ人間はいない 学校で生徒はかわる』2002年より 
発刊を祝して
全国高等専修学校協会
会長 柏木 照明

この度、本協会副会長及び高等専修学校校長としても縦横の活躍をされている清水信一先生から、自著の出版についてお話がありました。
 ご一緒に協会業務の推進に携わっているとは申せ、巻頭の言葉をお引受けするには余りにも僭越ではありましたが、時代の試練に立つ高等専修学校が、その基本理念を噛みしめ再考しつつ社会の関心を着実に高めようとするとき、先生の書は、黙々と努力を重ねている多くの方々の共感を呼び、やる気の源泉となることを確信してお引受を致した次第です。
 タイトルで『ダメ人間はいない 学校で生徒はかわる』と明快に言われたのは、先生が今日に至るまで、教育現場で行った幾多の実践や試行錯誤を経て培った成果を惜しみなく披くことで、教育の根本に何が欠けていて何が必要なのかを、教師自身が心底から理解することに始まる。との力強い自信からごく自然に発せられた言葉であると私は考えます。
 先日、私は清水先生の学校で行われた公開授業に参加してまいりました。個々の科目における授業も大いに参考となりましたが、特に素晴らしいと感じたのは、全学年に環境教育を導入し、自然との共生を理解させ現実の場面で行動に移していること。
 ニュースに関心を持たせ時流を素早くキャッチし、何時でも柔軟に対応できる人材育成を目指してニュースのスクラップノート作成を日々実践していること。
 また、生徒ひとり一人を手塩にかけて育成していくとの校是に即し、各学年共にオリジナルの教科書を使用していること。
 さらに、英語や芸術、技能に至る各分野においても、楽しんで覚える授業を生き生きと展開している等々であります。
健常であることや障害のある人に係わりなく特別視はせず、相互に影響を与え合うことで人間としての友愛精神が自然に高められるとした、いわゆる混合教育がどのように育まれるかを実際の各場面で実感させていただきました。
 肌で感じ取らせるノーマライゼーションの理念に対して、先生が発揮されているリーダーシップに加え繊細ともいえる突っ込みは、生徒を中心とする教師集団の粘り強い努力の毎日が語っております。就職や進学面のみならず、全国各種の大会等で常に優秀な結果を収めていることでも明らかですし、何よりもチームの団結力に目を見張るものがあることです。
 さて、少子化現象の只中にあって、各種の学校が歴史の中で築き上げてきた教育資源の総力を持って如何に人材育成を目指していくか、他方では運営面を含む現実のギャップにどう向き合うか、今だからこそ、改めて足下の基盤を綿密に点検する時間をもつ必要があると考えるのです。
 種々の難問が山積する中、校長として陣頭指揮をとる清水先生執筆による実践の書は、解決への福音として大きな役割を果たすものと信じております。
 21世紀の高等専修学校は時代にマッチしたスリム化を果たし、シャープで有用な戦力となることを余すことなく社会にアピールし、理解を得なければならないと考えます。最後になりましたが、清水先生のこれから益々のご活躍を期待申し上げます。同時に高等専修学校は不滅であることを宣して推薦の言葉といたします。

校長  情報ID 16540 番  掲載日時 12/15/2006 Fri, 10:13