校長の独り言【116】 



 8月29日の東京新聞の「筆洗」にこんな記事がありました。
『昼間、警察官が立っている街角の路上に一万円札を落としておく。雑踏でなく、通行人一人一人を確認できる程度の場所に。一人が拾って警察官に届け出たら、また路上に置いておく。百人に試したらどうなるか。作家の柳田邦男さんが著書『人の痛みを感じる国家』(新潮社)の中で想定した実験である▼柳田さんは百人中百人が届け出るだろうと見る。警察官が見ているのだから、確かにそうだろう。では夜間、人通りのほとんどない道路の薄明かりの中に一万円札を落としておき、同じことを繰り返したとする。柳田さんは百人中半数も届け出る人はいないのではないかと見る▼夜間の実験では、通行人は「匿名」の社会で生きているのと同じ面がある。自分が誰なのか、誰にも見えていない。柳田さんは「匿名化を広範に許すネット社会は、人の心の反社会性や悪の面を行動へと誘導する機能が潜んでいる」と、警告している▼名古屋市で女性を拉致して殺害した男たちは、インターネットサイト「闇の職業安定所」で知り合った。互いの素性も知らぬまま、金を奪うために凶行に及んでいる。「女性なら誰でもよかった」という▼人間は匿名の世界でどこまで身勝手に、残酷になれるのだろう。背筋が寒くなる。ネット世界の匿名性を悪用した犯罪は後を絶たず、今も犯罪への誘いや手口の情報がはんらんしている▼人間の心には善だけでなく悪もすんでいて、「誰も見ていないから…」とささやくかもしれない。でも、自分には見えている。夜道でも一万円札を届け出たい。』
 私も以前からインターネット社会での匿名性に危惧していましたから、全く同感でありこの記事に賛同しました。このまま、この匿名性が日本社会の中で「当たり前のこと」になってしまったら日本は滅びるとしか思えません。ですから、まずはより多く方にこの問題に危機感をもっていただきたい、そして、この状況を打破するために、インターネットの利用が低年齢化している以上、学校教育の中でこそ、あらゆる学種で匿名性の問題点を教え、更に、人前ではっきりと自分の意見を言える人間を育てていく必要性があることを強く感じています。

校長  情報ID 20563 番  掲載日時 08/31/2007 Fri, 08:17