校長の独り言【172】 



 武蔵野東学園むらさき会会報 第46号「可能性をひろげて」より

           シリーズ 園長・校長語る・「温故知新」

                      武蔵野東技能高等専修学校 校長 清水 信一
 
 私が武蔵野東学園の教員となり、多くの人に支えられたお陰で、今年度で満三十年を迎えることができました。
 三十年前は小学校開校二年目の年度で、当然、中学校も高等専修学校もありません。私は、五年二組(現在の五年C組)のクラス担任として東学園での教員生活を始めました。当然、北原キヨ先生もお元気で、開校間もないと言うことで、すべてが0からのスタートでありました。また、同僚は私を含め若い先生ばかりであり、毎日、子どもたちや保護者の皆さんから自閉児教育を学ばせていただいたと思っています。当然教員は、コンビニのセブンイレブンの如く、朝早くから夜遅くまで、懸命に頑張っていたと思います。その様な状況下で、キヨ先生は絶えずすべての先頭に立ち、パワフルに我々教員を、子どもたちを、そして保護者を導いてくれました。だからこそ、今日の東学園があるのだとつくづく思います。  
 そこには、創立の母、キヨ先生の「自閉児は、教育トレーニングで絶対に改善する」という強い信念と逞しい行動力がありました。そして、何よりも、開校間もないことから、キヨ先生と我々教員、それに保護者の皆さんの、この小学校に掛ける強い思いと大きな願いがあったのです。それは一糸乱れぬ本当に強固な連帯感でありました。
 そして、三十年が経過した学園は、三歳から十八歳の教育カリキュラムの確立、卒業後のフォロー指導体制、余暇活動への支援、そして、親亡き後の自立のためのグループホーム、ケアホームの運営と、学校法人としては他に類のない体系を創り出してきました。このように、キヨ先生亡き後、みんなの夢は実現しました。私といたしましても喜びでいっぱいであります。
 しかし、近年ふっと思うのです。それは世の中の変化では片づけられない、三十年前と変わってしまった幾つかのことについて。以前は、むらさき会事業目標に、「すべての会員の子弟は我が子である」等、具体的な文字にする必要がなかったのですから。
 三十年前も、現在も東の教育の根本は何一つ変わりません。
「温故知新」。私はこれから、故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを探っていきたいと思っています。

校長  情報ID 25878 番  掲載日時 07/15/2008 Tue, 09:40