校長の独り言【598】 



 武蔵野東学園むらさきOB会会報 第24号 むらさき草
 武蔵野東高等専修学校の30年を振り返り
                               武蔵野東高等専修学校
                                 校 長 清 水 信 一

 本校は、1986年(昭和61年)4月に開校しました。
 学校設立の使命は、障害のある子どもたちを、社会に送り出すため、学園の最後の教育の場として、更には、混合教育の実践の場として、正に学園内外の願いと期待で設立されました。

 そして、この30年で、本校は、1,946人の卒業生を上級学校、実社会に送り出しました。
 平成27年度(2016年3月卒業)までに高等専修学校を卒業した自閉症児は941名、そのうち企業等への一般就労は501名(53%)、作業所等への福祉就労は340名(36%)、大学・短大・専門学校等への進学者は90名(10%)。教育困難といわれている自閉症児でありますが、幼児期の身辺自立から始まり生活自立、さらに社会自立していきました。

 第1期生(57名・内、障害のない生徒4名)の進路指導は、学園としても未知の世界でありました。生徒の生活スキルを高めることが出来ても、彼らを就職、進学させる為の方法は知りませんでした。

 ですから、本校の進路指導の第一歩は、公共職業安定所に指導を仰ぎに行き、武蔵野千川福祉会、社会福祉法人武蔵野様との交流研修会の実施と、勉強と情報収集からのスタートでありました。
 幸い、第1期生の卒業に合わせて、昭和63年(1988年)に障害者雇用率に療育手帳を有する人が対象となり、カウントされるようになり、これにより企業就労が加速しました。

 しかし当時は、私の力不足により、進路指導、入試広報、学校運営等を一人で行っていたこともあり、第1期生57人全員の進路を卒業までに決定することが出来ませんでした。1989年1月13日に、ボストンから帰国した、キヨ先生にご相談し、補習科(18人)の設置を認めて頂き、残った生徒の進路指導を展開して、何とか全員の進路を決定することが出来ました。

 そして、キヨ先生は補習科の相談をした翌日早朝に逝去されました。

 そして、この30年の間に、子どもたちを取り巻く、法律も整備されました。
◆発達障害者支援法 平成17年4月~
◆障害者自立支援法 平成18年4月~ 
 ※この年に、本学園友愛寮がオープン。
◆特別支援教育元年 平成19年4月~ 
◆障害者差別解消法 平成28年4月~ 
◆発達障害者支援法が改正 平成28年5月25日~ 
(教育) 第8条
 国及び地方公共団体は、発達障害児(十八歳以上の発達障害者であって高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に在学する者を含む。)
であった法律が、ついに、10年来の念願が叶い、次のように改正されたのです。
●高等学校、中等教育学校及び特別支援学校並びに専修学校の高等課程に在学する者も含む。

 更に、同じく今年の5月に、教育再生実行会議の第九次提言が発表されました。
 今回の提言は、発達障害や不登校、外国人の子供などの教育のあり方を議論したものです。 その提言の中に、高等専修学校の学種名が初めて記載されました。
今までは、後期中等教育機関を表す時には、高等学校等で表記されることがほとんどでしたが、今回は、高等学校、高等専修学校と、省略されずに並列表記となっています。

 これも、本校を含め、全国の高等専修学校の日々の努力と教育成果、更には、その先進的取り組みに対しての国の評価であると思っています。未来ある子どもたちの為に、この高等専修学校を益々発展させなければならないと痛感しています。
 今回の第九次提言も、発達障害者支援法同様に、本校で学ぶ、生徒の幸せにつながることを願って止みません。

 このように、この30年の節目節目に、タイミング良く、法改正があったこと、何よりも、多くの理解者に支えていただいたことに感謝いたしております。

 今後は、この30年の歴史の上に、最終的な本学園の夢である、ユートピアの実現を目指します。どこまで、具現化できるのか、まったく想像がつきません。
しかし、ユートピアの実現は、今まさに国が推進している、一億総活躍社会の実現でもあると考えています。

特別支援教育の推進
  ↓
農業分野における障害者就労の拡大
  ↓
医療、介護との連携
  ↓
地方創生

 そして、『私の一番の願い』である、
 「町」の中には、健康な人、障害のある人、背の高い人、小柄な人等様々な個性を持つ人が共存しています。だから、様々な個性を持つ人が互いに互いを理解し合うことが、みんなが安心して暮らせる「まち」にするために最も必要なことなのです。
 
 学校教育の中で『障害のある人の理解教育』を根付かせることが、みんなが安心して暮らせる「まち」に近づける最良の方法と考えます。
 
 この理解教育がたくさんの「町」の学校で実施されることにより、ある程度の時間は必要となりますが、幼児期からの積み上げ教育の成果がその国民性に必ずや変化をもたらし、みんなが安心して暮らせる「まち」となることを信じ、願っています。

 社会全体が、混合社会になり、みんなが安心して暮らせる「まち」が形成されることを強く願っています。

校長  情報ID 73973 番  掲載日時 03/17/2017 Fri, 08:19