武蔵野東学園広報 第21号 【オンライン版】    平成18年(2006年)3月31日発行

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落成祝賀会

  北原記念館・北原記念体育館落成祝賀会

 新校舎の北原記念館、北原記念体育館が平成18年1月31日に工事が完了いたし、無事竣工をいたしました。各フロアーの引越しも終わり学園事務局、教育センターをはじめ、すでに小学生(5・6年生)や中学生の使用も開始されています。チャレンジショップや友愛寮も開店、入寮に向けての準備が着々と進められています。
 2月27日は、ご来賓の方をはじめ設計、施工業者の方々、学校関係者、各園校の後援会役員(委員)の方をお招きして約400名のご出席を賜り、にぎやかに落成祝賀会が行われました。祝賀会の前には北原記念館の内覧会も行なわれ、北原記念体育館は会場でビデオによる放映で紹介されました。

 《 落成祝賀会 》 平成18年2月27日(月)12:00~13:30
           (内覧会 11:00~12:00)
  開   会 
  主催者挨拶 理事長 寺田 欣司
  感謝状贈呈  ㈱東畑建築事務所 様
          ㈱新建築設計事務所 様
          西松建設株式会社 様
  来賓祝辞 元文部大臣 奥野 誠亮 様
  乾   杯 連合後援会代表 岩崎 充利 様
        (中学校新体育館 映像紹介)
  謝   辞 常務理事 横山 芳夫
  閉   会 

富士サファリパークにて
こんなに綺麗にそまったよ

 元文部大臣、(財)アジア福祉教育財団理事長 奥野誠亮様

 私が武蔵野東学園との関連を持ちましたのは昭和47年から文部大臣を2年間務めさせていただいてからでございまして、もう30年以上の昔のことでございます。今日こちらにうかがわさせていただいて、東学園は単に武蔵野市の学園にとどまらず、日本の学園にとどまらずまさに国際社会における自閉症児教育のリーダー的な存在になったなとこのように大変嬉しい気持ちでいっぱいです。この席には衆議院議員の土屋さんもおられます。都議会議員をやっておられた井口さん、中学がございますお隣の小金井市の稲葉市長さんもこのようにたくさんおられる中で、この私一人にお祝いの言葉を述べさせていただくということになりまして大変に申し訳ありませんが、私にとりましても非常に思い出の多い学校でございます。したがいましてそんなことでもお話させていただいて、お祝いの言葉にかえさせていただこうかと思っています。
 寺田理事長や横山事務長や教職員の皆さん方が一生懸命にやっておられる。これまで私が注目してまいりましたのは、この学校に上級校を建てるためにこられた保護者の皆様がこの教育に心酔されており、だんだん自分の子が大きくなって、このような教育が受けられないものかと真剣な努力を払っておられたことを今も思い出深いものがあるわけでして、当時はまだ幼稚園だけでございました。幼稚園を卒園しても小学校にはこういう教育を受けるところがない、何とかしてまず小学校を作りたいというこでございまして、私は毎日のように保護者の何人かの方からいろいろと陳情を受けてまいったように思うわけでございます。そんなことから私はやっぱり文部省としても力になってあげたい、そういったことで事務当局にうかがいますと自閉症児の教育ということで看板をあげておられる学校が国内にもいくつかあるんですが、どれがいいという評価は決まっていなんです。決まっていない矢先にその一つだけに力を入れることは、やっぱり問題があるんですとそういう話でございました。私はあなたたち保護者の皆さんのあの真剣な姿をどう考えているのかといったことがございました。あれだけ真剣に考えておられるということは、それなりに効果があるから真剣になっておられるのではないか。力になれるものはなってあげたらいいじゃないかと言ったことが始まりでございました。米軍に使用させていた土地が返ってくる。そこへ学校を建てたい、ところが当時の武蔵野市の当局も地域の方々も必ずしも協力的ではなかった。それではその土地を文部省所管の土地にしてもらおうじゃないかということで直接大蔵省に話しまして、文部省所管の土地にさせていただきました。そうしましたら文部省の考えの通りにこれを利用していくことができるわけでございます。文部省の審議官が土地代をいくらにしましょうかと言ってきました。小学校は義務教育で無償という建前をとっているじゃないか、土地代をとればそれだけ授業料が値上がりするということになるのではないかとこう申しましたら職員は頭をかいて大臣室を引き下がっていきました。久里浜に障害者のための研究所を持っていたわけでございますので、その一角に国立の教育研究所の分室を作ったわけであります。無償にするためにその分室と学校当局とが共同して自閉症児のよい教育方法を確立していくということにして、只でお貸しするということができたわけでございました。私は今の地方宝くじを創めた人間でございまして、そのお金ででこちらにプールを寄附させるようにいったわけでございまして、その温水プールが今も拝見して残っておりまして、私も若干の力になったということで懐かしい思いでございました。
 そして、学校が出来まして教育が進んでまいりますとアメリカのハーバード大学のケーガンという教授が北原先生の教育の手法に惚れ込んだわけでございました。何度もこの学校に見学に来ておられますしボストン東スクールの方からのお祝いの言葉がございましたけれども、そこの運営を北原さんに託すというようなことにまでなっていったわけでございました。北原さんもだんだん希望をお持ちになってアメリカで土地を購入して、自前の学校を作ろうというような気持ちがあったり度々いろいろな教育の大会で招かれてお話をされる、だからアメリカと日本との往復も非常に度重なっていたと思われるわけでございます。北原さんがアメリカから帰ってきてすぐ私のところに来るもんですから、『あなたこんなとこに来る必要ありませんよ、もっと自分の体を大事にしなさい』とご注意申し上げていたのですが、それから1日か2日してお亡くなりになりました。本当に世界から求められて北原さんは活動しておられた、ただひたすらいい教育を確立していきたいという熱情がまたそれを支えておられたのがご主人の勝平さんだったと思います。そういうようなことが実りまして中学ができ高等専修学校ができるということになってまいったわけでございます。本当に見違えるようなものでございまして、私は北原キヨ先生ご夫妻もきっとこの学園の姿を喜んでおられるのではないかなと思います。
 このあいだ東京大学の数学の先生で藤原 正彦という方が「国家の品格」という本をお書きになった。これはベストセラーになっているようでございます。聞きますとまたその続編もお書きになったようでございます。私はその最初の本の半分くらいしかまだ読んでいないのですけれども、私と考えがよく似てるという気持ちを持っておりますので、少しそのことを申し上げさせていただきます。『日本はこれまでひたすら欧米に倣って努力をしてきてそれがいいと思っていた。しかし今になって考えるとそれは間違いだったと、やっぱり国家には歴史や文化や伝統がある、これを大事にしていかなければならないんだ』と書いておられるわけでございます。西欧では自由とか平等とかというものを大事にし、自由競争、力あるものが勝利を占めていきます。日本は、小さいときには本当に人間を作る、道義、道徳を身につけさせるんだとしっかり幼児の頃にその道義、道徳を体に覚えこませるという考え方から始まったと思います。ただ、強いものが勝てばいいというものではなく思いやりの心を育てていかなければならない、あらゆるところに神は宿っており人間と自然の共存でございます。狩猟民族は勝つか負けるか命をとるかとられるか、日本は伝統的に人間と自然が共存しているんだという考え方にたっていたんだと私は思います。私達は山を征服するということは言いませんでした。でも山を畏れるということは言いましたが随分違います。『欧米では何が何でも論理で全てをかたづける。その論理で片付けることはできないと、その論理にも誤りがある』ということを指摘しておられるわけでございます。細かいことをこのような席で申し上げることは遠慮させていただきますが、お読みになりますと日本は日本なりに意思があったんだ、伝統があったんだ、文化があったんだ、これを大事にしていかなければならないんだという気持ちを持っていただけるのではないかと思います。
 日本が敗戦によってアメリカから歴史の分断を図られたわけでございました。教育勅語の無効宣言もさせられました。そしてまた、小学校で修身の教育も禁止されました。自由に育てていくんだと自由に育てることによって大きな人物が生まれあがっていくんだというようなことでございますけども、やっぱり小さい時には体で何が道義、道徳、人間として考えなければならないかということをしっかり覚えこませることが、私はやっぱり大事ではないかなと思っているわけであります。教育勅語がなくなりましたから教育基本法を日本として作ろうというわけでありました。教育基本法には伝統の尊重とか宗教、情操の涵養とかが書き込まれておりましたが占領軍はこれを許しませんでした。歴史とか伝統とかを無視するような今、私は学校で新しい歴史教育が行われているのか心配でなりません。左翼が強い力をしめてきたばっかりに曲げられている面も非常に多いと思います。
 北原先生は永い間の伝統というものを大事にしながら、やっぱり弱い人たちと一緒になってその人たちを立派に育て上げていくんだ、教育していくんだとその熱情にかられておられたと思います。単に論理だけでかたづけるもんじゃないんだと生活を一体にしながら育てていくという気持ちが、今日の武蔵野東学園の教育が確立してきているのではないかと思うわけでございます。これを是非皆さん方によって、よりよいものに発展させていただきたいと願っているところでございます。保護者の方々は自分の子どもの教育を通じて身に感じて努力につながっているんではないかと思っております。このような学園は他にはないだろうと思います。寺田理事長、横山事務長そして立派な教職員の方々は、世界から求められているこの武蔵野東学園であることに誇りをもちながら、さらに大きな発展を続けていかれますよう心よりお祈りをして、私のお祝いの言葉にかえさせていただきたいと思います。


* 元文部大臣 奥野 誠亮様(アジア福祉教育財団理事長)のご祝辞を掲載させていただきました。

 落成祝賀会には、ご来賓の方をはじめ多くの方々にご出席をいただき、また多数のご祝電も頂戴いたし、おかげさまをもちまして祝賀会も盛会に終えることができました。ご出席いただきました方々をはじめ、ご支援いただきました皆様に心より厚くお礼を申し上げます。

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