竣工記念
特別号

武蔵野東学園広報 第21号 【オンライン版
平成18年(2006年)3月31日発行

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 北原記念館、北原記念体育館竣工に寄せて
      「おかげさまで」と「もったいない」

理事長 寺田 欣司

目  次

 P.2 落成祝賀会
 P.3 武蔵野東中学校 
  北原記念体育館
 P.4  北原記念館
 P.5  平成17年度の学事

    『東だより』 バックナンバー

 忘れられつつある美しい日本語がいろいろあります。その中でもとくに注目されているものは「おかげさまで」と「もったいない」だそうです。子供の頃、祖母や母親から耳にたこが出来るほど聞かされたこの二つの言葉は、私にとっては今でも日常語ですが、多くの日本人に忘れられつつあるというのは少々淋しい思いもします。
 北原記念館と北原記念体育館、この二つの建物が完成したのは、学園創立にあたっての、北原キヨ、勝平先生ご夫妻のご決断、小学校開校にご尽力賜った奥野先生、そして熱心な保護者たち、さらに、今は亡き安部前理事長、野田前学園長、植松先生、理事、評議員など多くの皆様のご理解とご支援があったからです。二つの記念館は、こうした沢山のかたがたの「おかげ」で完成することが出来たのです。私たち学園教職員は「おかげさまで」の言葉を忘れることなど出来ません。
 そして「もったいない」の言葉です。太陽の恵みを見ているだけでは「もったいない」。だから新校舎の屋上に太陽光発電を導入しました。雨水をそのまま下水に流してしまうのは「もったいない」。だから新校舎の地下に雨水枡を設置して雨水をため、それをビオトープで再利用し、また災害時の備えとしたのです。
 学園事務局が北原記念館に移転することになり、ピカピカの新校舎で使うにはいささか気が引けるような、沢山の古い家具調度品が出ました。しかしそれをそのまま廃棄するのは「もったいない」。子供たちの机などとは違い、理事長室や事務室の調度品は、学園の教育の質の向上には関係ない。高いお金を出して新品を購入するのは「もったいない」。
 その結果、新校舎には学園がこれまで三十年以上使ってきた机や椅子、絵画に加え、リサイクルセンターで見つけた9千円の理事長机、1万円の事務用スチール家具などがいくつも搬入されました。備え付けてみると、不思議なほどそうした家具類が新校舎にぴったりはまりました。新校舎は「もったいない」の言葉をしっかり受け止めてくれました。
 学園が40年にわたり蓄積した自閉症児教育のノウハウを、学園の中だけにとどめておくのは「もったいない」。だから新校舎建設に際し、教育センターの設備を抜本的に拡充し、学園外にあって自閉症に悩んでいる人達へそのノウハウを開放することとしました。すると全国各地から、噂を聞きつけた多くの自閉症児とその保護者がカウンセリングを受けにセンターを訪れました。今や皆さん教育プログラムのスタートを心待ちにしています。
 「もったいない」の言葉から「けちけちする」とか「倹約する」を連想するとしたら少し見当違いです。「もったいない」と言いながら、どうしたら再利用できるか、他に転用できないか、と首をかしげる祖母や母の姿を今でも思い出します。そう、「もったいない」は「知恵を絞る」ことにつながります。子供たちの教育にも大切な言葉なのです。
 他人に対する感謝の気持ちを忘れず「おかげさまで」と素直に表現できる人、「もったいない」どうしたらよいかと知恵を働かせることができる人、そうした人間を育てる、これは私たちの学園の教育が目指すところです。わたしたち教職員は新校舎、新体育館の竣工を機に、改めてこの二つの美しい日本語を大切にする心を新たにしたいと思います。

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