武蔵野東学園広報 第22号 【オンライン版
平成18年(2006年)7月18日発行

180-0012 東京都武蔵野市緑町 2-1-10
Tel. 0422-52-2211㈹ Fax. 0422-53-1090
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 伝統に息づく “東のこころ”

武蔵野東教育センター所長 長内 博雄

目  次

 P.2 幼稚園
 P.3 小学校
 P.4  中学校
 P.5  高等専修学校
 P.6  学園総合
 P.7 学園総合(2)
 P.8 募集関係のお知らせ

    『東だより』 バックナンバー

 各園校が複合的に集まっているこの武蔵野東学園は、教育共同体としての一つの人格を持った存在ということができます。学園の歴史を少しさかのぼってみますと、武蔵野東小学校が設立されたことで学校が複数になり、法人名が「武蔵野東幼稚園」から「武蔵野東学園」に変わりました。創立者の北原キヨ先生からは、小学校開校当初、われわれ一人ひとりが子どもの教育に『まだ伝統のないうちの学園では、かける人一倍の努力と情熱をもってそれを補っていかなければならない。』と諭され、また『とくに自閉の子どもたちを育てるには、子どもをわが子と思って愛するまごころが必要です。この子たちは学園の守り神であって、いつになっても決して見捨ててはいけない。』と教わりました。われわれ教職員はそれをもっとものこととして教育活動に励み、また保護者はその意をくんで熱心に後援し、このような “東のこころ” が今日までずっと保たれてきました。
 北原先生はその後中学校を開校し、創立20周年のころにはすでに幼小中までそろっていましたが、その記念誌に自ら名づけて揮毫した「輝ける若き世代」のタイトルからは、やはりまだまだ若い成長期の学園というキヨ先生の思いが読みとれます。学園はその後創立時の気運がとぎれることのないまま今日に至っていますが、幼稚園のみの時代の後、10年間の内に小、中、高等専修が次々に開校されるというすさまじいまでの展開をみたことが、それに拍車をかけることになりました。
 北原先生の言われた伝統とは、長年の積み重ねから築き上げられたその学校の業績や手法、それらを伝え発展させる姿勢などを指していると思われますが、学園発祥から40年を越え、伝統というものが少しできつつある学園の教育史を思ったときに、そこにはその時々に学んだ子どもたち、保護者、教職員その他側面から支援してくださった多くの人たちの意志、心の重みというものが、目には見えなくてもはっきりと感じられます。そして、武蔵野東学園がいつまでも本物の武蔵野東学園であるためには、まさにこの北原キヨ先生の言われた努力や情熱、まごころの精神こそが生きつづけていなければならないのだということです。時代の歩みとともに、その時々に合った新しい教育手法や教育プログラムを生み出そうと努める姿勢や情熱も、またいつの時代にも変わらぬまごころも、学園草創のころからの創立者の心として価値あることに思います。
 今年度から、教育センターは規模を広げて多くの自閉症児の療育に当たっており、これらの子どもの自己実現を援助しています。教育センターを頼りに真剣な思いで足を運んでくる親御さんや、地域の幼稚園・学校には気が進まなくても教育センターにはよろこんで通ってくるという子どもたちがたくさんいるのです。武蔵野東学園に息づくまごころを求めてくる人たちのために、学園が長年にわたって築いてきた教育の精神と技術が、ここでも大きな役割を果たしていることを実感しています。
 伝統ということばにとらわれる必要など毛頭ないのですが、伝統ということばは「生きた教育」のないところには存在し得ないものであるはずです。今日の子ども、教師、保護者らの間に生き生きとした交流がなされ、子どもたちの新鮮な活動が日々脈打って繰り広げられている日常こそが、学園の先人の意図した教育の姿であることを忘れてはなりません。
 築き上げることは一朝一夕にできませんが、壊れるのはいとも簡単なものです。学園にかかわるすべての人が、学園を通して流れる教育的こころを貴重なものとして、今後とも子どもたちを中心とした生き生きと脈打つ学園を築いていきたいものです。そしてまた、人心の退廃が日常茶飯事に見聞される今日こそ、学園に息づく“東のこころ”が社会の在るべきすがたとなり、守るべき砦ともなって広く伝わり、社会に影響を与えていくことを強く願うものです。

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