本園では、健常児と自閉症児がともに過ごしています。
分け隔てなくいっしょに生活する中から、ゆっくりと時間をかけて、互いに認め合う友達の関係を築いていきます。
このようにともに育ち合う教育を私たちは「混合教育」として創立以来50年に渡り実践を深めてきました。
文部科学省では「インクルーシブ教育」として、国内のみならず、世界においても普及をめざす教育モデルとしています。本園の教育は、文部科学省よりインクルーシブ教育システム構築モデル事業として研究委託されました。
(平成25年度~平成27年度)
幼児期は人とつながり合いたいという心情が豊かに育つ時期です。だからこそ、言葉だけではうまくつながりにくい自閉症の友達と一緒に幼稚園生活を過ごしながら「どうすれば気持ちが伝わるんだろう」「何を思っているのかな?」など、仲良くなりたいという心情を土台として、皆が試行錯誤を繰り返します。
そのなかで、気持ちが通じ合ったと思えるような時は、うれしさも大きいものです。友達とつながった喜びは、かけがえのない経験となっていきます。50年以上にわたり「混合教育」を特色とする本園の園生活で培った力は、今後ますます多様化がすすむ社会の中で、人とコミュニケーションをとるための重要な力であり、また自信となるのです。
* 子どもにとってのウェルビーングとは「身体面、心理面、社会的場面、そして自分の未来を創造する力という4つの面から見て、子どもが心安らぐ安定した生活環境を持ち、希望や夢への期待を持って生活できている状態=子どもが健康で安定した生活を実現できている状態」を指す
本園の混合教育について、東京学芸大学の藤野先生は、文部科学省委託研究報告書にて、
『差異や多様性を本来あるべきものとして認めるインクルーシブな価値観が「空気」のように園に存在しているとでもいえましょうか。その価値観は先生たちの保育・教育活動や年長さんたちのふるまいの中にににじみ出ます。そしてことさらに意識せずその「空気」に触れながら生活するうちに、自閉症の子も定型発達の子もお互いの違いを受け入れ、また受け入れる感覚が少しずつ自然に身に付いてゆき、それぞれのスタイルで社会性が育ってゆくと考えられます。』とまとめてくださいました。
本園では、子どもだけでなく、保護者同士の交流も大切にしています。保護者会では、「自閉症とは」「交流の仕組みと様子」などを教師から話したり、自閉症児クラスと健常児クラスの保護者の方が語り合う場も設けています。また、後援会活動のサークルには、「元気カフェ」という保護者の方が主催する交流の場や勉強会もあります。クラスの親睦会や公園遊びなどでは、健常児クラスの保護者が自閉症児クラスの保護者にも声をかけ、一緒に過ごす機会としています、こうして、子どもたちを真ん中にして保護者の方も一緒に学び合い、育ちあっています。