本年度、武蔵野東学園は創立55周年を迎えました。記念すべき50周年では「武蔵野東学園物語」の刊行をはじめ、これまでを振り返りつつその先の学園を見つめるさまざまなイベントを催しました。そして「より快適な教育環境を子どもたちに与えたい」と目標を定めて、各園校の抜本的施設整備を図りました。今夏も第一幼稚園は園庭の改修、小学校は西館2階教室、中学校はPC室の改修、高等専修学校は無線LANの設置や生徒用机といすの交換をし、子どもたちの教育環境が一層充実しました。さらに55周年事業の一つとして南アルプスの「チロル学園の購入」を掲げていますが、その募金についてはたくさんの方々からご協力をいただいているところです。
50周年からもう5年が経過したわけですが、わが学園の教育への取り組みにおいては少しずつというよりも大きな歩幅で、かつ次世代に引き継ぐための歩みをしてきたと感じています。ご存じのように国はこの数年間でいくつかのポリシーと方向性をもって教育を組み立て直そうとしています。それは例えば、旧来の受け身中心であった保育や授業スタイルから、主体的で対話的な深い学び(アクティブラーニング)という新しい教育方法に転換すること。またグローバル社会となり、それぞれの文化を理解し、進んでコミュニケーションを図る力をつけることです。さらに、「多様性」といった観点から、一人ひとりの能力や適性に応じた指導をし、社会全体が個々を敬いながら「共生」を考えることについてもこれまで以上に推し進めようとしています。
こうした時流から、この度文部科学省は中央教育審議会の分科会の中に「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」を設置しました。この背景には、いじめ、虐待、不登校、支援の必要な児童生徒の増加といった解決すべき問題が次々とクローズアップされていることがあげられます。一方で、「Society 5.0」といって人工知能(AI)等の先端技術が産業や生活に取り入れられ社会が劇的に変わるなかで、学校の教育も必然的に変化し、新たな指導の在り方が求められています。私は今回この部会の委員になりました。それは武蔵野東学園が「混合教育」を実践し、自閉症児への「生活療法」によって実績をあげていることに対する評価をいただいたものだと思っています。その期待に応えるべく、今私はこの部会で自分が、あるいは学園の教育が示せるものを考えめぐらせています。
ただ考えてみると、当学園の教育は特別支援教育だけではなく、健常児の教育にも先進的な指導と誇れる成果があって、語れることは無数にあることに気づきます。英語教育、体育・ダンスの一貫した指導の結果は、検定や部活動の大会の成績にはっきりと表れていますし、幼稚園での遊びを科学することや園祭りでの創作活動と中学校で始まった「探究科」という授業は、先に述べたアクティブラーニングから自分なりの解答を生み出す力の養成に結実します。また小・中学校で近年強化してきたICT教育は、学び方を大きく変革し、既存の教科の枠を越えた指導が展開されるものと思っています。と同時に、私たち教員が教材のデジタル化、教育のネットワーク化を進め、AIを活用した学習ドリルのようなことができれば、自閉症児の指導を含め教育の質の向上も図れると確信します。
55周年を機に、子どもたちにとっての新しく最高の教育を追い求め、今後も一層努力していく所存です。あらためてご理解とご協力をお願いいたします。
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