武蔵野東学園広報 第38号
平成23年(2011年)12月19日発行

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  50周年事業はじまる

武蔵野東中学校 校長 石橋 恵二

目  次

 P.2 幼稚園
 P.3 小学校
 P.4  中学校
 P.5  高等専修学校
 P.6  教育センター
 P.7 学園総合
 P.8 お知らせ

    『東だより』 バックナンバー

 先日の学園祭で本校に初めて来られたある方がこうつぶやきました。「こんな学校が存在していたんですね」。これは、学園祭当日に行われたステージ発表をご覧になった後の感想です。ステージ発表は自閉症の生徒たちの歌や器楽演奏のほか、健常の生徒による落語や空手演武などが次々と披露されました。隅にいるのではなく舞台の中心でスポットを浴び、伸び伸びと歌や演奏している自閉症の生徒たちに、しっかり居場所があり認められる機会があるということもそうなのですが、演奏の途中でダンス部の女子生徒たちが登場し、曲に合わせて楽しくコラボレーションをしている様子や、あたりまえのように健常な生徒たちが入り混じって舞台を盛り上げている様子に、その方は感激されたのでしょう。そして校庭に行ってみると模擬店が出ていて、自閉の子たちも皆と一緒になって活動をし、大きな声で販売をしたり、協力して作業をしたりしている様子を見て、どこにもない世界観・共生感を有する学校と感じられたに違いありません。
 1994年ユネスコとスペイン政府の共催で「特別なニーズ教育に関する世界会議」が開かれ、『サラマンカ宣言』が発表されました。すべての子どもに満足のいく水準の学習を達成し維持する機会を与えること、またすべての子どもの独自の性格、関心、能力といった幅の広いニーズを考慮して教育システムが作られ、教育プログラムが実施されるべきであるという内容です。こうした流れも受け、日本でも特別支援教育が実施され、3年が経過しました。平成20年の数字ですが義務教育段階の児童生徒数は1079万人で、特別支援学校や特別支援学級、そして部分的に普通学級から支援学級などに通級して指導を受けている子どもは全国に約23万人いたそうです。別の文部科学省による調べでは、小・中学校の教員が発達障害(学習障害、注意欠陥多動性障害、および高機能自閉症等)があるだろうと判断した児童生徒は、実に68万人にものぼるとありました。注目したいことは先ほどのサラマンカ宣言のなかに「今後はインクルーシブ(inclusive=包括的)な方向性をもつ普通学校こそが、差別的な態度とたたかい、喜んで受け入れられる地域をつくり、インクルーシブな社会を建設し、万人のための教育を達成するための最も効果的な手段となる。さらにこうした学校は子どもに対して効果的な教育を提供し、教育システムの効率性をあげ、ひいては経済性もあげるものである」という意見を盛り込んでいることです。ご存じのように武蔵野東学園は、世界的潮流ともなっている「インクルーシブ教育」をまさに「混合教育」という形で実践している学園です。それも半世紀も前の、学園が創立された幼稚園時代から先駆的に実践してきました。
 あと3年で本学園は創立50周年を迎えます。この事業計画は先日保護者の皆さまにはお知らせした通りですが、中学校においては昨年度より50周年事業の一環として校舎リニューアル工事を着手し、本年の夏までに校舎の増築、校庭の人工芝張り替え、特別教室の拡張などを図りました。これによって健常児クラスと自閉児クラスの教室が各階ですべて隣り合わせの配置にでき、校舎全体からはぬくもりのある空気が醸し出されています。また教室数を増やしたことで自閉児・健常児とも習熟度別授業の環境がさらに整い、拡張した特別教室では創作や実習活動にゆとりをもたせることができました。幼稚園、小学校でもすでに園舎・校舎のリニューアルがはじまっています。今回の50周年事業は、学園の教育をさらに前進させ、子どもたちに多くの恵みを与えるものです。私たちは、「混合教育」の理念のもとで育った子どもたちが各方面で活躍し、「共生社会」の理想的な在り方と重要性を実際の言葉と行動をもって世に示す担い手となってもらいたいと願っています。保護者の皆さまには本学園を応援してくださることが、まぎれもなくこれからの社会の発展に寄与するものと信じていただき、重ねて50周年事業へのご理解とご協力をお願いする次第です。

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